2014年08月07日
男の子はずっと昔、虫で遊ぶのが好きだった。
「その日めずらしく、カマキリが3匹捕れたんだ。
お前知ってる?すげー綺麗に食うんだぞ。こう、鎌で上手に挟んでさ。でもセミを入れた時は嫌だったな。うるせーからさ…」
…
さと君は夏休みを俵津で過ごした。俵津には電車もコンビニもないが、代わりに山と海と、爺婆の家がある。
その日、虫捕りに出かけたさと君は、3匹のカマキリを捕まえた。虫カゴに飼って、自由研究のために観察することにした。
『8月○日、ちょうをたべた。
8月×日、はえをたべた。…』
さと君は毎日、エサをやるために虫捕りに出かけた。
カマキリは脱皮して、みるみる大きくなった。抜け殻は研究の成果としてポリ袋に大切にしまった。
そしてついに、カマキリは虫カゴの縁にタマゴを産みつけた。さと君は自由研究の集大成になると思って、孵化を楽しみに待った。
しかし残念なことが起きた。
タマゴに気がついた婆が「こりゃいけん」と言いながら、マッチの火を擦って燃やしてしまったのだ。
婆は、カマキリよりも強かった。
さと君はすっかりやる気を無くし、カマキリの世話をやめた。
するとカマキリは、1匹、また1匹と、跡形も無く消えていった。
さと君が見たとき、メスが1匹だけ生き残っていた。
その最後の1匹は、外の世界に帰してあげたそうだ。
さと君の妹、わっきー